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-------------------- ◇特集[竹原義二――場を解く]【★★★★☆】 無有建築工房を主宰されている竹原義二さんが、住宅を設計する際にどのようなことを考えているか、実例を通しての紹介となります。 [山本町北の家] 大阪府八尾市にある夫婦と子供二人が住むための住宅です。1階には地域に根ざした活動をしているクライアントの事務所、2階には中庭を介すように住居を設け、介助が必要となる父親も住まうという、各階で用途が異なる建物となっています。 この敷地は、桜並木の遊歩道が続く、低層住宅地の一画にあります。南側の人通りも場の条件となるため、敷地境界となる場所に庭を設け、安らぎを与える緩衝帯となることが設計の手がかりとして進めました。また建物内部も、住まい手の求めに応じるように、各室は中庭を介して区切られています。 そうして区切りながらも、建物を一枚の大きな切妻屋根で覆い、光が家全体をひとつの家型をなすようにしています。トップライトや温もりある光で家全体をバランスよくつなぎとめ、住まい手にとっても、街にとっても違和感無く場になじむ佇まいとなっています。 [諏訪森町東の家] 大阪府堺市にある夫婦と子供三人が住む2階建ての住宅です。容積率、建蔽率ともに最大限まで使った上で、中庭を設けた構成になっています。敷地は住宅街であるため、都市型住宅らしく、道路に対して閉じながらも、街の気配を引き込み、内側に拡がりのある空間を目指しました。 配置上、特徴的なのが二つの中庭を挿入したことです。それにより必要とされる四つの室のボリュームは切り離されていますが、開口の工夫により、光と風を内部に呼び込んで、平面的にも断面的にも各室が緩やかにつながっている感覚とさせています。 中庭により光や風の動きが視覚化され、住む人の生活も流動的になり、家族としても一体感が生まれることを期待しています。この住宅は、住宅密集地における都市型住宅の最適解の一つと言えるのではないでしょうか。 ― ― ― ― ― ― ― その他の住宅にも共通することですが、竹原さんは、まずその場が持っている力を読み解き、並行して必要な諸室を配置していきます。そして建築されたものは、敷地に違和感なくなじみ、末永く住みたいと思える居心地良い空間となっています。 たくさんのスタディを重ねたであろう、今回の作品の成り立ちを見ていると、場のもつ魅力や力を見極めることがいかに大切かということがわかるのではないでしょうか。 -------------------- ◇住宅紹介[横内敏人建築設計事務所の仕事2題]【★★★★☆】 [姫路のソーラーハウス] 兵庫県姫路市の東に位置し、のどかな田園地帯にある住宅です。敷地は元々、水田だったところを宅地開発した場所であり、四周を道路で囲まれ、隣家が近接していないのが特徴です。 ここに、夫婦と子供二人が住む住宅を計画する上で、瀬戸内の気候特性と冬の晴天率の高さを生かし、太陽光発電やエネルギー負荷の少ない住宅を計画することとなりました。 建物の形状を屋根は南下がりの片流れとし、ソーラーパネルを乗せています。また、その片流れの屋根架構を現わしとすることで、吹き抜けを通じて風が流れ、2階北側の高窓から夏の暖まった空気を温度差で自然対流するように工夫されています。 また、建物の南側には季節によって日差しを調整してくれる落葉樹を植え、開口には夏の日差しを遮る庇や、冬の断熱性を高めるロールスクリーンを設け、寒暖にも対応できるようにしています。 環境のことが叫ばれる昨今、エネルギー負荷を減らすエコな住宅のとして、お手本と言うべき住宅です。 [上越高田の家] 敷地は新潟県上越市、出羽三山が見え、城跡の堀端であるため、たくさんの桜の花を楽しむことができる自然に恵まれた場所です。ここに夫婦とその母という3人で暮らすため、3階建てで延床104.11平方メートルの住宅が計画されました。 この地域に合わせたデザインをする上で、横内さんが検討したのは、新潟ならでは雪景色にたたずむ姿です。 まず降り積もる雪に配慮し、住宅部分が持ちあげ、1階はRC造の高基礎でガレージに利用するかたちでデザインしています。そして一面に白く雪化粧した景色に溶け込むよう、外壁は白を基調としました。 また、開口はパノラマの風景を楽しめるよう開放感を持たせていますが、建物の内部では、暖炉や木質を基調とし、暖かみを与えています。 この建築は自然素材を用い、環境と一体となった建築です。敷地に対して、敬意を払い、控えめでありながら空間としての質を保って設計されています。 新潟という豪雪地特有の自然と融合する建築としてのプロトタイプとなり、同様に環境に配慮された建築が立ち並べば、北欧のような洗練された街並みがつくられるのではないでしょうか。 -------------------- ◇連載 詳細図で読み解く住まい[第11回 木村ボックス]【★★★★★】 今回は、宮脇檀さん設計の木村ボックスを題材に、宮脇さんのディテールに焦点を当てていきます。 建物は神戸市の六甲山の麓、港が望める場所にあります。夫婦と子供一人のため住宅で、1階に居間や食事室といった共用の室、2階に寝室や子供室など個室を配置しています。 宮脇さんの設計では、ただ黙然と敷地に立ち尽くすことからはじまります。その土地をどう読むか、地形、歴史、地域とその建築群が持つもの、風土、天候、都市計画等、全感覚的に土地を読み取るために敷地内外を歩き、立ち止まります。 木村ボックスの敷地でも、唯一の眺望とも言える海が見えるポイントに食堂を配置したり、山の尾根が見える場所に調理台と開口部を設けるなど、住まう人本位でありながら、環境をやさしく取り込む設計をしています。 ディテールに目を向けると、テラスに設けたガラリ戸、網戸、ガラス戸、障子戸、といったものを壁に引き込むためのレールが11本必要となったのですが、これでは見苦しいということで、テラスをスノコ状にし、スノコのすき間をレールとして利用しています。 また、開口の窓は穴であることを強調させるように、奥に引き込むようにデザインしていたり、建物を訪ねてくる多くの人にとって目にすることとなる郵便受けも細かなデザインを指定して作成されています。 外部の環境から、人の触れるディテールまで、とにかく住まう人のために、何ができるかという工夫をし尽くしている設計です。これまでの経験を生かした教科書のような回答の数々と巧みな空間構成は、見ているだけで住まう人の姿が想像でき、楽しくなります。 住宅に関わる設計者のお手本として勉強となることばかりで、ディテールに触れることができ、大変参考になりました。 --------------------
by k2_plan
| 2013-01-01 09:00
| 住宅計画研究会
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