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-------------------- ◇特集[家を身に纏う]【★★★★☆】 建物が住まい手を『囲う』というより、『纏う』に近い感覚の住宅7つを題材にした小住宅の特集です。 [あやさやハウス](伊礼智設計室) 東京都世田谷区の新しい分譲地に建つ、夫婦と二人の子供のための住宅です。建物の名称はこの家に住まう子供の名前で、子供たちにとって楽しい家になるようにと願って名づけられました。 この敷地は土地が小さい上、建蔽率から建坪が9坪に限られてしまい、断面を工夫した縦に暮らす生活とならざるを得ません。そのため、階段に小さな小窓を設け、あちこちの居場所と繋がるとともに、上に向かうにつれて明るく拡がりが出てくるよう飽きさせない工夫しています。 室内は壁ではなく家具で仕切り、境界に機能を持たせるようにしています。思わぬ場所が収納になっていたり、小さな部屋になっていたりと、たくさんの居場所ができたという印象で、その最たるものが一畳の読書室と思います。 小さな家の中に小さな空間を盛り込んだことで、身体的な感覚が溢れ『身に纏う』を実現されています。これからの子育てが楽しくなる空間ではないでしょうか。 [白馬の山荘](伊礼智設計室) 長野県の白馬村にあるスキーを楽しむための山荘です。設計する上では一時滞在する機能さえあれば良いので、倉庫のような建物になりかねないのですが、最小限の建築要素を上手く取捨選択し、人が生活する場としてデザインされています。 内部はキッチン、ストーブ、浴室など必要最低限のものを設え、開口部は腰窓にしてペアガラスを入れ充分な断熱もされています。厳しい自然から守るためのシェルターとしての役割を持つ空間といえるでしょう。 様々な要素が削られた中、残ったものをつないでいるのが土間ではないでしょうか。外部と内部の中間領域となるその場所では、準備、片付け、滞在といった生活全般に活用されることがプランから想像でき、見えてくるかのようです。 余計なものをそぎ落とした必要最小限の建築は、生活する者と建物が一体で近しい関係となり、まさに『家を身に纏った』と言えるでしょう。 現代では少子化が進んでいることもあり、最小限のものさえあればよい小住宅への需要が高まっている風潮です。ですが、住まう人が手が伸ばせる範囲は、大きな家も小さな家も変わりません。 住宅は大小に関わらず、考えなければならないことは一緒です。最小限化された小さな家を設計を見ていると、建築家のするべきことが再認識できるのではないでしょうか。小さくても夢のある豊かな空間ができるのが建築家と考えます。 -------------------- ◇特別記事[構造家との楽しい協働]【★★★★☆】 一般的に構造設計は意匠設計に追従することが多いため、柱・梁など構造部材をいかに目立たたずに隠そうかと考えます。ですが、プロジェクト初期から構造との協働で進めていくことで、合理的かつ意匠的にもすぐれた構造体をデザインに取り入れることも可能となります。そうして建てられた実例です。 [道の駅池田温泉](大建met+なわけんジム) 岐阜県にある温泉つきの道の駅です。町営池田温泉に隣接して、地域の農産物等の物販店、レストランを設けています。建物も地産地消のコンセプトのもとに、岐阜県産の木を使用することを求められています。 敷地は道路と駐車場に囲まれた四方からアクセスできる場所です。そのため、ウィンドウショッピングの感覚で寄り道ができる、シンプルかつ開かれた建築となっています。ここではガラスのファサードが外観を特徴づけていますが、それとともに柱であり、柄であり、陳列棚でもある多機能な木造の構造体が印象的になっています。 全体計画においても、大きな屋根と細い柱で構成し、構造と意匠が一体となっています。戸建て形式の店舗を雁行配置させることで生まれた隙間は、地方において失われつつある商店街のような機能を持ち、構造でありショーケースでもあるファサードも相まって、賑わいに一役買っているのではないでしょうか。 [すごろくオフィス](大建met+なわけんジム) 岐阜県若宮町にあるオフィス付き簡易住居です。空洞化が進む地方の中心市街地において設計者が目指したのは「自分の家を持ってくる」という新しい居住スタイルです。それを実現させるために、意匠と構造が早い段階から協働で進められました。 解体と再組立を前提としたフレームワークに中古海運コンテナを収め、コンテナ自体への構造負担はないことで、解体・移築を容易になるという設計です。 また、フレームにおさまるコンテナに50mm程度寸法違いがあってもおさめられる接合や、フレームそのものも離し置きすること、またトップライト部のFRPで精度調整を行なえるようにするなど、自由度の高いディテールを用いています。 この計画はまるで、一時代を築いたメタボリズムのようです。構造の技術的進歩が、現代の生活スタイルを変える日はそう遠くないのかもしれません。 この二つのプロジェクトは構造納まりのディテール決定により、全体構成が決まっています。構造体を隠すのではなく、意匠と構造が協働で設計することで建築とともに生活の質も変わる可能性があるのではないでしょうか。 -------------------- ◇特別記事[倉敷建築工房の仕事2題]【★★★☆☆】 [芝山町の家](倉敷建築工房大角雄三設計室) 場所は千葉県の成田空港の南側に位置する芝山町、ひっきりなしに飛行機が離着陸し、大きな音が聞こえてくる場所です。緑豊かな雑木林に囲まれた場所で、大屋根のかかる大きな農家を古くて新しい農家に生まれ変わらせた再生プロジェクトとなっています。 この家を再生させる前提条件として、防音対策、3世代が一緒に暮らすこと、そしてこの農家を将来にわたって残すことができることに主眼が置かれています。 まず、平面計画においては新たに耐震壁を設け、新しいプランに再構成しなおされています。居間・食堂・茶の間など主となる生活空間においてはトップライトを設け、日の目をみることがなかった小屋裏と黒光りする大きな梁が力強さを見せています。 防音対策は、建具に防音性能を持たせるだけではなく、土間や縁側といった中間領域を外部に接するよう配置することで、空間そのものが緩衝材代わりとなるよう工夫がされています。また、それにより外部との寒暖差も和らげる天然の断熱材ともなっています。 建物は放って置くと朽ちてしまいますので、理想は使いながら建物を維持する動態保存です。プランこそ現代に合わせたものとなりましたが、この地域の景観を壊さなかったことは将来、評価されることではないでしょうか。 [日比の家](倉敷建築工房大角雄三設計室) 建物のある岡山県玉野市は古い港町です。敷地周辺はメーカーの住宅が多いですが、分譲地の最南端にあることから瀬戸内海も一望できる場所です。 5人家族が住むための住宅ですが、建物を一つの大きなボリュームとするのではなく、寝室、客間、居間・食堂と分け、一本の廊下でつながるようにしました。 外観を特徴づけているのはカラー鉄板葺き寄せと、古い大冠振瓦を採用している屋根です。棟によって異なるため、小さな3棟という感覚になり存在感が薄れ、地域に合ったボリュームへと配慮されています。 また、3棟の区切った配置とすることで中庭を作ることができ、各部屋に光や風が充分に行き渡ることに成功し、住まい手に豊かな自然をもたらしています。 少しだけ離すという分棟配置は、平面図では建築家が行なった小さな工夫にすぎません。ですが、この工夫は住まい手にゆとりをもたらし、地域にゆとりをもたらす選択となっているのではないでしょうか。 --------------------
by k2_plan
| 2012-05-01 09:00
| 住宅計画研究会
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